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ROICが高ければ株価も上がる、とは言い切れません。計算の意味をつかみ、事業の中身や資本コストまで結び付けて考えることが大切です。初心者向けの本を紹介しながら、数字の読みどころを整理します。
まず読みたい5冊
ROICの基礎から企業事例まで、学べる範囲の違う5冊を並べました。会計に慣れていない人には『ROIC超入門』、個別株の銘柄選定に関心がある人には『株デビューする前に知っておくべき「魔法の公式」』がおすすめです。
| 本 | 主な内容 | 参考価格(税込) |
|---|---|---|
ROIC超入門 ―P/Lだけじゃない事業ポートフォリオ改革 | 計算、事業別ROIC、ROICツリー、WACC・EVA | 1,980円 |
ROICツリーで読み解く経営戦略 | ROICツリーと企業事例、会計上の論点 | 2,640円 |
図解&ストーリー「資本コスト」入門〈第3版〉 | 資本コストとROIC、ROE、TSRなど | 2,970円 |
企業価値向上のための 経営指標大全 | 48指標と31ケース、ROICの企業事例 | 4,730円 |
株デビューする前に知っておくべき「魔法の公式」 | 投下資本利益率と益利回りによる銘柄選定 | 1,760円 |
価格は定価を参考にした目安です。実際の販売価格は時期や店によって変わります。ページ数や事例の特徴も含め、本ごとの内容を見ていきましょう。
ROICの計算を基礎から学ぶ本もあれば、企業戦略や資本コストまで扱う本もあります。知りたい範囲が定まっていると、読む本を決めやすいですよ。
ROICの基本
ROICは「投下資本利益率」のこと。事業に投じた資本から、どれだけ利益を生み出したかを測ります。一般的には税引後営業利益を投下資本で割って算出し、利益額だけでは見えない効率を示します。
税引後営業利益は、簡易計算なら営業利益から税金分を差し引いて求めます。投下資本は株主資本と有利子負債を軸に、事業に不要な現預金などを調整するのが一般的です。ただし実務上の定義には違いがあります。
営業利益が20億円で、税率を30%と仮定すると、税引後営業利益は14億円です。投下資本が100億円ならROICは14%。利益額と一緒に、それを生み出すための資本の大きさも見るわけですね。
ROEは株主資本に対する利益、ROAは総資産に対する利益を見る指標です。ROICは事業に使う資本に焦点を当てるため、借入のある企業も含めて効率を捉えやすい面があります。似た指標でも分母が違うんです。
利益と資本
利益率が高くても、工場や在庫、売掛金などに多くの資本が必要なら、ROICは伸びにくくなります。反対に、利益率が控えめでも、少ない資本で安定して稼ぐ事業なら高いROICになることも。利益率だけでは決まりません。
別の会社を仮定します。営業利益12億円、税率30%、投下資本50億円なら、税引後営業利益は8.4億円でROICは16.8%。営業利益20億円の会社より利益額は小さくても、資本効率はこちらが高いという結果です。
ROICを分解すると、売上高に対する利益率と、投下資本に対する売上高の回転率が関わります。値上げや原価低減で利益率を高めるのか、在庫や設備の効率を改善するのか。事業運営の違いが数字に表れます。
資本コストも忘れずに見ましょう。ROICがWACC(加重平均資本コスト)を上回れば、概念上は投資した資本が資金調達の負担を超える価値を生んでいると考えられます。効率を資金のコストと合わせて捉える視点ですね。
数字の裏側
ROICが高いという理由だけで買いと決めるのは早計です。株価には将来への期待が織り込まれているため、優良企業でも期待が大きすぎれば割高になりえます。利益の伸びや配当、株価水準も見て判断しましょう。
資本を減らすとROICが上がる場合があります。ただ、必要な設備や人材への投資まで削れば、将来の競争力を損なう恐れも。高い数値が投資の成果なのか、それとも投資不足の表れなのか、設備投資や研究開発費の推移も確かめたいですね。
現預金やリース資産のほか、のれんや事業再編もROICの計算に影響します。会社同士の数字を並べるなら、どの項目を投下資本に含めているかにも目を向けましょう。見かけの差が算定方法から生じることもあります。
会社全体のROICでは、事業ごとの違いが隠れる場合もあります。成長事業への投資で一時的に下がったのか、資本を使っても利益が伸びにくい事業があるのか。セグメント別の数字と決算資料を照らせば、経営の打ち手が見えてきます。
本ごとの読みどころ
- 『ROIC超入門 ―P/Lだけじゃない事業ポートフォリオ改革』は松永博樹・伊藤学著、2021年刊の192ページ。会社全体と事業別の計算からROICツリー、WACC・EVAまで順を追って学べます。基礎固めをしたい人におすすめです。
- 『ROICツリーで読み解く経営戦略』は野瀬義明編著、2025年刊の156ページ。テスラとトヨタ、村田製作所とニデックなどを題材に、数値と企業戦略を結び付けます。国際会計基準や粉飾決算の影響も扱います。
- 『図解&ストーリー「資本コスト」入門〈第3版〉』は岡俊子著、2024年12月刊の256ページ。ROAやROICをROE、TSRとの関係まで含めて扱い、PBR1倍割れも資本コストの視点から考えられます。投資家の考え方も押さえたい人に合います。
- 『企業価値向上のための 経営指標大全』は大津広一著、2022年刊の556ページ。48の指標と31のケースを収録し、日立製作所や丸井グループなどのROIC事例を扱います。オムロンや米3Mの事例もあり、指標を幅広く調べたい人におすすめです。
- 『株デビューする前に知っておくべき「魔法の公式」』はジョエル・グリーンブラット著、2006年刊の238ページ。投下資本利益率と益利回りを使う銘柄選定を、平易な言葉で解説しています。刊行年が古いため、現在の銘柄推奨ではなく投資手法の入門として読むのが適切です。
結論
ROIC分析を一から学ぶなら、計算と事業別の見方を押さえられる『ROIC超入門』が堅実な出発点です。銘柄選定まで視野に入れる人は『魔法の公式』を参考に。企業戦略の背景まで読み解きたくなったら、『ROICツリーで読み解く経営戦略』へ進むとよいでしょう。
資本コストや企業価値との関係まで深めたいなら、2024年刊の第3版『図解&ストーリー「資本コスト」入門』が候補になります。幅広い指標と事例を調べたい人には『企業価値向上のための 経営指標大全』がおすすめです。必要な深さに合わせて選べます。
本を読んだ後も、ROICの数字ひとつで売買を決めないこと。計算の定義と数年の推移に加え、事業の投資計画や資本コスト、株価も合わせて判断しましょう。ROICは将来を断言する答えではなく、企業の資本効率と経営判断を読み解く手がかりです。
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