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個別株を買うとき、売上や利益の伸びだけで決めていませんか。売掛金や棚卸資産に資金がどれほど残っているかまで追えば、資金繰りの様子が見えてきます。株式投資初心者に向けて、運転資本分析と本の候補を紹介します。
4冊の早見表
| 書名 | 主な内容 | 参考価格(税込) |
|---|---|---|
[決定版]決算書を読む技術 | 図解、利益と現金、在庫と資金繰り | 1,760円 |
決算書×ビジネスモデル大全 | 41社の事例、業種と在庫の見方 | 1,980円 |
決算書の読み方と業種別のポイント | 勘定科目と幅広い業種の事例 | 1,980円 |
[決定版]新・ほんとうにわかる経営分析 | 売掛債権、棚卸資産、運転資金 | 2,420円 |
価格は税込の参考価格で、定価を目安にしたものです。実際の販売価格は時期や販売店によって変わります。
売掛債権や棚卸資産を資金繰りと結びつけて学ぶなら、『[決定版]新・ほんとうにわかる経営分析』。決算書の読み方から始めたい人には、図解中心の『決算書を読む技術』が入口になります。
企業の事業内容や業種ごとの違いを事例でつかむなら、41社を扱う本や業種別解説の本も役立ちます。数字の読み方と企業の稼ぎ方を結びつけてみましょう。
運転資本の基本
運転資本は、日々の営業を続けるために必要なお金です。分析では売掛金と棚卸資産を足し、買掛金を差し引いて考える方法がよく使われます。
売掛金は、商品やサービスを売ったあと、まだ受け取っていない代金のこと。棚卸資産は、販売前の商品や製造途中の品物です。どちらも現金が別の姿になっていますね。
買掛金は、仕入れた商品や材料の代金のうち、まだ支払っていない金額です。支払いに猶予があれば、その期間は仕入先から営業資金を借りているような状態ですね。
利益が出ているのに、手元の現金が増えないこともあります。そんなときは売掛金や在庫に資金が滞留していないかを確認してください。損益計算書と営業キャッシュフローを並べると、利益と現金のずれが見えてきます。
売掛金の読み方
売掛金が増えたら、売上高の伸び率と比べます。売上高が10%伸びても売掛金が50%増えていれば、入金待ちの資金が売上以上の速さで膨らんでいる可能性があります。
売掛金回転期間は、平均売掛金を年間売上高で割り、365日を掛けて概算します。平均残高が年間売上高の10分の1なら、回収まで約37日です。
決算日の残高は、季節性の影響を受けることがあります。期末に大口納品が集中する企業もあるため、可能なら期首と期末の平均残高を使い、複数年の推移を追いましょう。
回収期間が延びていたら、販売条件や取引先の構成を確かめてください。売上が一部の顧客に偏っていないか、貸倒引当金や営業キャッシュフローも合わせて見るとよいですね。
棚卸資産の読み方
在庫には、売れていない商品や製造に使う材料などがあります。売上に伴って増えることもありますが、売上高や売上原価を上回るペースで膨らむなら、原因を確かめましょう。
棚卸資産回転期間は、平均棚卸資産を年間売上原価で割り、365日を掛けて求めます。期間が長くなるほど、仕入れや製造に投じたお金が在庫にとどまる時間も長くなったと考えられます。
在庫の内訳を見ると、増加の理由を探しやすくなります。原材料、仕掛品、製品のどれが増えたのか。材料不足への備え、製造工程の滞留、売れ残りでは意味が違います。
在庫が増えたからといって、すぐ悪材料と決めつけるのは早計です。新店舗や新商品の準備に伴う場合もあります。一方、値下げや評価損が続けば利益を押し下げるため、在庫回転と粗利益率を一緒に見てください。
資金繰りとの接点
売掛金や在庫が増えると、間接法のキャッシュフロー計算書では営業キャッシュフローを押し下げます。買掛金が増えれば支払いを後に回せるため、短期的には手元資金を支えます。
キャッシュ・コンバージョン・サイクルは、営業資金が売掛金や在庫にとどまる期間を見る指標です。売掛金回転期間と在庫回転期間を足し、買掛金回転期間を引いて概算します。
買掛金回転期間は、年間仕入高が分かれば平均買掛金との比で計算できます。仕入高が開示されていない場合は売上原価で近似できますが、業種をまたいだ比較には注意が必要です。
決算期の数字だけで判断せず、四半期資料や前年同期と照らすと季節変動が見えやすくなります。小売の繁忙期前と建設の工事進行中では、同じ数字でも意味が違います。事業の流れを踏まえて読みましょう。
決算書を読む技術
川口宏之著、かんき出版。2021年6月刊の288ページです。決算書の読み方を図解と3段階の構成で解説しており、会計初心者も読む順序をつかみやすいでしょう。
取引フロー図で、数字の裏側にある経済活動を追えます。在庫圧縮が資金繰りを改善する関係も扱い、利益とキャッシュの違いを整理する助けになります。
財務分析指標や有名企業の分析、決算書を使った割安株探しも学べます。個別株の決算書を読み始める初心者が、読み方の基礎を整える一冊です。
ビジネスモデル大全
矢部謙介著、東洋経済新報社から2023年5月に刊行された272ページの本です。会計知識がない読者にも向け、貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書と事業の仕組みを図解します。
注目企業41社を分析し、ニトリホールディングスの収益性や在庫回転効率も取り上げています。在庫の量は販売方法や商品構成と併せて見ると、企業ごとの違いが見えてきます。
41社の事例を通して、業種ごとの数字の違いをつかみたい人におすすめです。回転期間の計算を体系的に練習する主教材というより、各社の稼ぎ方と決算書を結びつけて学ぶ一冊です。
業種別の決算書
黒木正人著、ビジネス教育出版社から2023年2月に刊行された208ページのA5判です。貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書と主要な勘定科目を幅広く扱います。
製造、卸売、小売、建設、不動産、運輸・倉庫、宿泊、飲食、介護サービスなどの業種別解説を収録。同じ棚卸資産でも、製造業の原材料と小売業の販売商品では確認する点が異なります。
繊維製品卸売業の利益操作事例や、業種別の融資力トレーニングもあります。個別株の分析で業界ごとの財務構造を知りたい投資家が、主要な勘定科目を学ぶ際に使える本です。
経営分析を深める
高田直芳著、ダイヤモンド社刊。336ページで、2016年2月に刊行されています。売掛債権回転期間と回収サイト、棚卸資産回転期間や適正在庫を詳しく扱います。
在庫が増える理由を考える視点に加え、営業運転資金と正味営業運転資金も解説しています。売掛金・棚卸資産・買掛債務の動きをまとめて見るための指標も学べるでしょう。
キャッシュフロー分析、資金繰り表、資金運用表まで含み、決算書から資金の流れを追う練習にも使えます。2016年刊なので、現在の企業を分析するときは最新の決算資料も併せて確認してください。
結論
売掛金・棚卸資産・買掛金を軸に運転資本と資金繰りを深掘りするなら、『[決定版]新・ほんとうにわかる経営分析』が第一候補です。回転期間や営業運転資金を、4冊の中で最もまとまって学べます。
決算書にほとんど触れたことがない初心者は、まず『決算書を読む技術』で利益と現金、在庫と資金繰りの関係をつかむとよいでしょう。基礎が分かっている人なら、前者から読み始めて構いません。
業種ごとの違いまで知りたいなら『決算書の読み方と業種別のポイント』、事業モデルとの結びつきに関心があるなら『決算書×ビジネスモデル大全』を加えると理解が広がります。最初の一冊は知りたい深さで決め、投資判断では最新の決算資料を確かめましょう。
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