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個別株の価値を調べていると、会社全体の利益だけでは実態が見えにくいことがあります。複数の事業を持つ企業なら、事業ごとの価値を見積もって足し合わせるSOTP分析が手掛かりになります。
SOTPの章で算定手順を扱う本、投資機会の発掘に焦点を当てる本、企業価値評価の基礎を解説する本。3冊は役割が分かれています。自分が知りたいのは基礎か、算定の手順か、それとも銘柄探しの視点か。早見表で違いをつかんでください。
3冊の早見表
| 書籍 | SOTPで学べること | 向いている読者 |
|---|---|---|
企業価値評価 第7版[上] | 事業別評価、倍率検証、株価への接続 | 算定手順まで学びたい人 |
The Manual of Ideas 第2版 | SOTPを使った投資機会の発掘 | 銘柄探しの視点を広げたい人 |
バリュエーションの教科書 | DCFと倍率評価の基礎 | 企業価値評価の全体像を知りたい人 |
SOTPは「Sum of the Parts」の略です。企業を複数の事業や資産に分け、それぞれの価値を見積もって合算する方法。事業の性質が大きく異なる会社をひとつの倍率だけで評価しにくいときに役立ちます。
初めて学ぶなら、企業価値と株主価値の違いを押さえておきたいところ。計算手順まで身につけたい人には『企業価値評価 第7版[上]』をおすすめします。
SOTPの考え方
主力の小売事業に、成長中のクラウド事業を抱える会社を想像してください。小売は比較的安定し、クラウドは成長期待が大きい。利益の伸び方も、ふさわしい評価倍率も異なりますよね。
全社の利益に一律の倍率を掛けると、こうした違いが埋もれることがあります。SOTPなら事業ごとに分け、それぞれの収益力やリスクに応じた評価方法を当てはめられます。
各事業の企業価値を足し合わせたら、現預金や有利子負債などを調整して株主に帰属する価値へつなぎます。事業価値の合計が、そのまま株価になるわけではありません。
SOTPが示すのは、一定の前提に基づく価値の推定です。事業を実際に分離できるのか、経営陣が資産を生かせるのか。こうした事情で、投資家が得られる価値も変わってきます。
価値を株価へつなぐ
数字を置いて考えてみましょう。事業Aを600億円、事業Bを300億円と評価すれば、事業価値の合計は900億円です。ここから純有利子負債200億円と少数株主持分20億円を差し引きます。
株主に帰属する価値は680億円。希薄化後の株式数が1億株なら、理論上の1株価値は680円です。実際の分析では、優先株や年金債務など、企業ごとの調整項目も確認します。
大切なのは足し算より、各事業の評価根拠です。将来利益やキャッシュフローの予測、採用する倍率、事業に見合った資本コストで結果は大きく動きます。
市場価格が推定価値を下回っても、すぐに割安とは言い切れません。成長見通しが楽観的すぎたり、親会社の本社費用が重かったりすることもあります。前提を変えた試算が欠かせない理由です。
企業価値評価 第7版
『企業価値評価 第7版[上]』は、マッキンゼー・アンド・カンパニーなどが著した624頁の専門書です。2022年1月発行で、参考価格は税込4,950円。実売価格は時期や販売店によって変わります。
SOTPの具体的な算定手順を追うなら、第18章が見どころです。複数事業企業のSOTP評価に加え、類似企業グループの選び方やマルチプル法の注意点も扱います。
第19章では、事業単位の財務諸表、資本コスト、同業他社の倍率を使った検証を学べます。事業ごとに評価モデルを組み立てたい人には、3冊の中でもっとも実務手順に近い一冊でしょう。
企業価値から1株当たり価値へつなぐ算定章があり、資料編にはコストコの企業価値評価も収録。全624頁の専門書なので、最初から通読するのは骨が折れるかもしれません。じっくり学びたい人向けです。
The Manual of Ideas
John Mihaljevic著『The Manual of Ideas: The Proven Framework for Finding the Best Value Investments』は、第2版が2025年8月に刊行された384頁のハードカバーです。価値投資のアイデア発掘から調査、分析、実行までを扱います。
第4章は「Sum of the Parts: Investing in Companies with Multiple Sources of Value」。87〜113頁にわたって、事業や資産を個別に評価して合算する考え方を投資機会のスクリーニングと結び付けています。
この本は、計算式を一から組み立てるより、複数の価値の源泉を持つ企業を探す視点に重きを置いています。隠れた資産や評価余地に注目して投資仮説を立てたい人におすすめです。
第2版には主要ファンドマネジャーへの100件超のインタビューと実例も含まれます。投資家の着眼点を広げる材料になりますが、DCFや類似企業倍率の算定手順を学ぶ主教材には、別の専門書を組み合わせるのが堅実です。
バリュエーションの教科書
森生明著『バリュエーションの教科書』は、東洋経済新報社から刊行された260頁の単行本です。2016年5月発売で、参考価格は税込2,860円。実売価格は時期や店によって変わります。
第3章のテーマは「DCF評価と倍率評価は、実は同じ」。評価方法を別々の公式として暗記するより、企業価値をどう捉えるかという基本構造から学びたい人に読みやすい内容です。
企業価値算定の基礎だけでなく、M&Aやリスクの数値化、事業再生なども扱います。株式投資に限らず、会社の価値をさまざまな場面から学びたい初心者にも適しています。
SOTPの独立した章や、事業別の算定手順を詳しく追う本ではありません。参考価格を抑えて基礎を固めたい人にはよい入口です。計算例まで学ぶなら『企業価値評価 第7版[上]』を補うと、理解がつながります。
分析で迷いやすい点
事業の区分は、会社の開示セグメントをそのまま使えばよいとは限りません。セグメント間の取引や共通費用があると、各事業の利益を単純に横並びにはできないところがあります。
本社費用を事業価値から外すと、合計価値を高く見積もりやすくなります。共通資産や設備投資、運転資本も含めて、利益がどれほど現金を生むのか確かめたいですね。
景気に左右される事業では、好況時の利益をそのまま将来に延ばすのも危険です。利益が平常時に戻った場合の価値も試算し、前提によって結論がどれだけ変わるかを見てください。
事業価値の合計が市場価格を上回る理由が事業分離への期待だけなら、慎重に見たいところです。実現まで時間がかかったり、経営陣が再編を選ばなかったりする場合もあります。理論上の価値と実現可能性は分けて考えましょう。
結論
事業別の算定をしっかり学びたいなら、『企業価値評価 第7版[上]』を第一候補にしてください。専門的で厚い本ですが、第18章・第19章から株価への接続まで学べる点が、SOTPを実践したい人にとって大きな強みです。
企業価値評価の基礎から入りたい初心者には、『バリュエーションの教科書』がおすすめです。SOTPの計算を補う本として読むと、それぞれの役割も見えやすくなります。
銘柄探しや投資アイデアの発掘に関心がある人には、『The Manual of Ideas』をおすすめします。算定手順より、価値の源泉を見つける目を養いたい人に適しています。
基礎を固めてから専門書へ進むか、実務的なSOTP分析を優先するかで選ぶ本が変わります。読んだ内容を実際の企業の事業構成や数字に当てはめることが、理解への近道です。
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