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個別株を見ていると、PERだけでは会社の値付けがつかみにくい場面があります。借入金や現預金まで含めて事業全体を見るとき、手掛かりになるのがEVとEBITDAの倍率です。
倍率が低い銘柄を見つけても、すぐ割安だと判断するのは早計です。まずEVとEBITDAの定義を押さえ、業種差や開示資料の数字を同じ条件で眺めましょう。
| 書籍 | 参考価格(税込) | 主な内容 |
|---|---|---|
企業価値評価 入門編 | 2,640円 | 日本企業の事例でマルチプル法とDCF法を学ぶ |
コーポレートファイナンス 戦略と実践 | 3,190円 | CompsやEBITDA倍率、企業財務の実例を深く学ぶ |
バリュエーションの教科書 | 2,860円 | 企業価値評価の全体像と倍率評価の位置付けを学ぶ |
ディープバリュー投資入門 | 2,420円 | EVと営業利益の倍率を軸にした割安株投資を学ぶ |
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EVとEBITDA
EVとEBITDAの倍率は、企業価値を表すEVをEBITDAで割って求めます。時価総額に有利子負債を足し、現預金を差し引くことで、事業全体の値付けを捉える指標です。
EVはEnterprise Valueの略で、日本語では企業価値と呼ばれます。株主の持ち分にあたる時価総額とは異なり、債権者にも関係する事業の価値を表すため、両者を分けて考えます。
EBITDAは、営業利益に減価償却費と無形資産の償却費を加えた指標です。金利や税の影響をならし、事業の稼ぐ力を大づかみに見るときに使われます。
倍率が8倍なら、EVはEBITDAの8倍という意味。投資資金を8年で回収できる保証でも、株主の利回りを示す値でもありません。
EVの中身
基本式はEV=時価総額+有利子負債−現金・現金同等物です。実務では非支配持分や優先株を加える場合もあるため、各社で算入項目をそろえる必要があります。
有利子負債には、社債や借入金など利息を伴う資金が含まれます。買掛金など営業活動で生じる通常の負債は、機械的にすべて加えるものではありません。決算書の区分を確認してください。
現預金が厚い会社では、時価総額が同じでもEVは小さくなります。反対に借入金が多ければEVが大きくなり、株価や利益が似た会社同士でも倍率は変わります。
企業価値は、文脈次第で株主価値を指すこともあります。EVと時価総額を同じものとして扱わず、計算に使った価値がどちらなのか確かめると読み違えません。
倍率が映すもの
同業でも売上成長率や営業利益率、景気への強さで評価は変わります。顧客の継続性も含め、市場が将来の稼ぐ力や事業リスクを価格に織り込むからです。
成長期待が高く利益率も良い会社は、成長の鈍い会社より高倍率で取引される場合があります。高い倍率だけで割高と決めず、投資が利益やキャッシュの増加につながるかを確かめます。
利益が一時的に急増すればEBITDAが膨らみ、見かけの倍率は下がります。原材料価格や為替の変動、補助金や資産売却などを決算短信や説明資料で確認し、利益の増加が続くか見極めましょう。
設備産業では減価償却費が大きく、EBITDAは営業利益よりも大きく見える傾向があります。小売や通信、ソフトウェアを同じ倍率で並べるだけでは、違いを正しく読みにくくなります。
数字の注意点
EBITDAは口座に実際に残る現金ではありません。設備投資や運転資金の増減、税金や利払いは差し引いていないため、営業キャッシュフローと設備投資額も並べて確認しましょう。
減価償却費を加えるため、古い工場の維持や更新が続く製造企業では負担を小さく見せることがあります。毎年まとまった設備投資が必要な会社は、EBITDAの見た目だけで割安と判断しないでください。
EBITDAが赤字かごく小さい会社では、倍率がマイナスになったり極端に跳ねたりします。この場合、利益回復の条件や手元資金、資金繰りを優先して見ます。
企業の調整後EBITDAは、一時費用などを独自基準で加算している場合があります。算式と加算項目が同業他社と一致しているか、開示資料で確かめましょう。
株価と企業価値
株価が上がれば時価総額が増え、通常はEVも上がります。ただし借入金返済や現預金の積み増しはEVを下げる方向に働くため、株価だけでは事業全体の値付けを読み取れません。
増資や自社株買いによって発行済株式数が変わり、株式分割では一株当たりの価格が変わります。過去の株価だけを見比べず、同じ基準日の株数と時価総額を確認してください。
有価証券報告書では負債、現金、減価償却費を確認できます。利益や会社予想は決算短信に、決算後の大型投資や借入返済はTDnetの適時開示や各社IR資料に目を通すと把握できます。
日本企業には政策保有株や事業にすぐ使わない現金を抱える会社もあります。余剰資産を考慮する場合も、換金性や税負担を無視し、保有額のすべてを余剰資金として扱うのは避けましょう。
本で補う視点
企業価値評価の基本を日本企業の事例で学ぶ初心者には、鈴木一功『企業価値評価 入門編』をおすすめします。272ページで、マルチプル法の計算例や注意点を取り上げ、エンタプライズDCF法との関係も解説します。
Compsの手順を企業財務全体の中で学びたい人には、田中慎一・保田隆明『コーポレートファイナンス 戦略と実践』をすすめます。472ページで、EBITDAマルチプルや眼鏡業界の例を含め、M&AやIR、株主還元まで扱います。
森生明『バリュエーションの教科書』は、企業価値評価を全体像からつかみたい人におすすめです。260ページでDCF評価と倍率評価の関係を扱い、株式投資や企業IR、M&Aの実務を平易に解説します。
買収者のマルチプルを軸に割安株投資を学ぶなら、トビアス・E・カーライル著『ディープバリュー投資入門』をおすすめします。中心指標はEVと営業利益の倍率で、EVとEBITDAの倍率やEVとEBITの倍率も関連指標として扱います。企業の存続可能性や長期のドローダウンにも触れています。
結論
EVとEBITDAの倍率は、資本構成の違いを考えながら事業価値を眺める物差しです。同業の企業で期間と定義をそろえてこそ、日本株の値付けを読む手掛かりになります。
倍率が低くても、EBITDAが景気の山にあり、設備投資の負担が重ければ、その数字だけで買いとは決めません。現金や借入金に加え、キャッシュフローと投資計画まで確認できた企業に投資判断を絞ります。
最初に買う一冊としては、マルチプル法の計算や注意点を日本企業の事例で学べる『企業価値評価 入門編』をおすすめします。Compsの具体例まで学びたい人には『コーポレートファイナンス 戦略と実践』です。投資判断では倍率に頼らず、決算資料の数字まで確認しましょう。
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