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個別株を始めたばかりだと、決算が黒字なら安心したくなりますよね。でも帳簿上は利益が出ていても、現金がまだ入っていない会社があります。株式投資で利益の質を分析するときは、利益が現金収益につながっているかを確かめます。
利益の質は不正を一発で見抜く判定法ではありません。売掛金や在庫の動きを追い、利益が続きそうか、資金繰りに無理がないかを考える視点です。
利益の質とは
損益計算書では商品を売った時点や費用が発生した時点で利益を記録します。入金と支払いは別の時期なので、黒字でも現金が会社に入っていないことがあります。
たとえば納品して売上を計上しても、取引先の入金が翌月以降なら利益には反映され、現金にはまだ表れません。成長中の会社では自然なずれですが、何期も続くなら確認が必要です。
利益の質を分析するときは、利益の善し悪しを一度で決めず、ずれの理由と翌期以降の動きを確かめます。株価の期待に見合う稼ぐ力があるかも判断できます。
利益と現金収益
キャッシュフロー計算書にある「営業活動によるキャッシュフロー(営業CF)」は、本業で得た現金と、本業に使った現金の差を示します。まずは投資CFや財務CFと分けて、営業CFを利益と並べてみましょう。
純利益が100億円なのに営業CFが30億円なら、利益の多くがまだ現金として回収されていない可能性があります。営業CFが130億円なら、利益を上回る現金を本業で確保した年度と読めますね。
とはいえ、営業CFは設備投資を差し引く前の数字です。工場や店舗の維持に大きなお金がかかる会社では、営業CFが黒字でも自由に使える現金は限られることがあります。設備投資を引いたフリーキャッシュフローも見ておきたいところです。
前年より営業CFが増えた場合も、理由を確かめましょう。売上の伸びで入金が増えたのか、それとも仕入先への支払いを遅らせたのか。背景しだいで、翌期に残る現金の見通しは変わります。
本の早見表
利益と現金のずれを学ぶ本から、財務諸表を体系的に分析する本までをまとめました。価格は税込定価を目安にしていますが、実売価格は時期や販売店によって変わります。
| 書籍 | 主な焦点 | ページ | 参考価格 |
|---|---|---|---|
2000億円超を運用した伝説のファンドマネジャーの 株トレ ファンダメンタルズ編 | 利益と営業CF、売上債権、在庫 | 184 | 1,760円 |
株を買うなら最低限知っておきたい ファンダメンタル投資の教科書 改訂版 | 四季報・決算短信、財務三表 | 264 | 2,200円 |
〖改訂版〗会計クイズを解くだけで財務3表がわかる 世界一楽しい決算書の読み方 | クイズで財務三表を読む | 240 | 1,870円 |
財務諸表分析〈第9版〉 | 収益性、キャッシュフロー、企業価値 | 384 | 3,740円 |
利益調整―発生主義会計の光と影 | 発生主義会計、利益調整、会計発生高 | 236 | 3,300円 |
アナリストのための財務諸表分析とバリュエーション 原書第5版 | 財務諸表の質と企業価値評価 | 544 | 6,160円 |
初心者が利益と現金の違いを学ぶなら、クイズ形式の『株トレ ファンダメンタルズ編』が分かりやすい入口です。四季報や決算短信を読むところまで学ぶなら、ファンダメンタル投資の教科書が実務につながります。
自分が見ている会社の決算では、純利益と営業CFを並べ、売掛金や在庫の数字にも目を向けてください。差が出た理由を確かめる材料になります。
アクルーアルの基本
アクルーアルは、会計上の利益と営業CFの差を捉える考え方です。簡易的には「純利益-営業CF」で確認できます。現金の動きを伴わずに計上された部分を考える手掛かりになるんですね。
会社の規模が違うと、金額だけでは比較しにくくなります。「純利益-営業CF」を平均総資産で割り、比率で見る方法があります。計算式は定義によって異なるので、比較する会社には同じ式を使います。
純利益が営業CFを大きく上回り、アクルーアルが高い状態が続くなら、売掛金や棚卸資産が増えすぎていないかを確認します。売上より売掛金の伸びが速ければ、計上した売上の入金に時間がかかっているかもしれません。
反対に、アクルーアルが低い、またはマイナスだからといって、必ず優良とは限りません。買掛金の支払いを先送りしたり、税金や賞与の時期がずれたりして、営業CFが一時的に膨らむこともあります。
個別株の実例
仮に年間純利益100億円、営業CF35億円の会社なら、単純計算のアクルーアルは65億円です。数字だけで危険と決めず、売掛金や在庫の増減も売上の伸びと照らし合わせましょう。
同じ期に売掛金が45億円、在庫が20億円増えて売上の伸びが小さかったら、現金化が遅れた理由を調べます。販売条件が変わったのか、売れ残りが増えたのかを決算資料で確認してください。
売上が大きく伸びれば、売掛金や在庫も事業拡大に合わせて増えることがあります。次の期に回収や販売が進んだかまで追ってください。単年の増加を悪材料と決めつけるのは早計です。
決算短信では、貸借対照表の売掛金や棚卸資産と、キャッシュフロー計算書の営業CFを見ます。内訳や前年同期からの変化も追うと、利益と現金のずれがどこで生まれたか把握できます。
時間軸も見る
アクルーアルや営業CFは、1年分だけで決めず、複数期の推移を見ましょう。利益と営業CFの差が一時的に広がったのか、毎年大きくなっているのかで、個別株への評価も変わってきます。
小売りや旅行のように季節性が強い業種では、四半期ごとに売掛金や在庫が膨らむ時期があります。前年同期や通期の数字と比べれば、季節要因による増加か事業の変化かを見分けやすくなります。
業種が違えば、現金の動きも異なるものです。前払いの多いサービス企業と、製品を作ってから代金を回収するメーカーを同じ基準だけで評価せず、商流や支払い条件も踏まえて読みましょう。
数字の読み違い
営業CFがプラスでも、資金繰りに安心できるとは限りません。借入金の返済や設備投資で現金が減るなら、財務CFと投資CFも見て、事業に必要な支出を続けられるか確認します。
利益と営業CFの比率は単独で決め手になりません。純利益が小さい会社では比率が大きく振れ、赤字なら比率の読み方も難しくなります。金額や売上に対する割合、数年の推移を一緒に見ましょう。
アクルーアルは不正の証拠ではなく、追加で見る箇所を示すサインです。売上を計上する時期や貸倒引当金、在庫評価も利益に影響します。数字だけで不正と断定せず、注記も確認してください。
本の役割
窪田真之著『株トレ ファンダメンタルズ編』は、60問のクイズで売上債権や在庫、営業利益と営業CFの違いを練習できます。初心者が利益の見方を手を動かして学ぶときに使える一冊です。
足立武志著『ファンダメンタル投資の教科書 改訂版』では、四季報や決算短信を読み、財務三表を銘柄判断につなげます。
大手町のランダムウォーカー著『世界一楽しい決算書の読み方』は、会話とクイズで財務三表の基本を読み解きます。
桜井久勝著『財務諸表分析〈第9版〉』は、キャッシュフロー分析から投資判断、株式価値評価まで扱います。
『利益調整』では発生主義会計や利益調整の推定、実証研究を取り上げます。
ペンマン著『アナリストのための財務諸表分析とバリュエーション』では、財務諸表の質を企業価値評価と投資判断に結び付けて学べます。
結論
利益の質を確認するなら、純利益と営業CFを並べてください。差の理由は売掛金や在庫、買掛金の動きから探します。利益と現金のずれが続き、説明できる成長要因が見当たらない銘柄は、黒字だけを理由に買わない判断が妥当です。
事業拡大で在庫が増えたり、入金時期がずれたりしても、次の期に現金化しているなら、単年のアクルーアルだけで売却を決める必要はありません。複数期の数字と事業の流れも確認して、売却を判断しましょう。
利益と営業CFのずれをクイズで学びたい初心者には、『株トレ ファンダメンタルズ編』を最初の一冊としておすすめします。財務諸表を使った分析まで知りたいなら、『ファンダメンタル投資の教科書』も続けて読むと、決算知識を個別株の判断に結び付けられます。
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