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企業価値の入門書から研究開発費を扱う専門書まで、投資に生かしやすい5冊を紹介します。それぞれの特徴と、決算書で無形資産を読み解く視点をあわせて見ていきましょう。
5冊の早見表
5冊のテーマと専門度を先に並べました。企業価値の基礎をつかむ本か、会計や評価モデルを掘り下げる本かがひと目で分かります。
| 本 | 主なテーマ | 向いている人 | 参考価格 |
|---|---|---|---|
会社の値段[新版] | 企業価値、ブランド、人材 | 企業価値の入口を知りたい人 | 1,012円 |
図解でわかる企業価値評価のすべて | 企業価値評価、無形資産 | 評価手法を整理したい人 | 2,200円 |
知的資産の会計 改訂増補版 | ブランド、技術、知的資産会計 | 会計や開示を深く知りたい人 | 3,960円 |
研究開発費情報と投資家行動 | 研究開発費、投資家の分析 | R&Dと投資判断の関係を知りたい人 | 4,400円 |
ファイナンスへの無形資産価値評価モデル | 無形資産の評価モデル | 専門的な評価を学びたい人 | 5,830円 |
価格は税込の公式希望小売価格・定価を参考にしています。実売価格は時期や販売店によって変わるため、注文時に書店でご確認ください。
刊行年には幅があります。書籍で評価の考え方を学びながら、会計基準や企業の最新状況は直近の開示資料で確かめると、投資分析に結びつけやすくなります。
無形資産を見る理由
無形資産とは、ブランド、技術、特許、ノウハウ、人材の力など、形のない資産のことです。会社の競争力を支えていても、財務諸表に金額がそのまま載るとは限りません。
個別株投資では、無形資産が将来の売上や利益をどう生むかを考えます。特許を持っていても製品が売れなければ、株主にとって価値が実現したとは言いにくいでしょう。
研究開発から新製品が生まれ、既存顧客の買い替えや新しい顧客の獲得につながる企業があります。ブランドの強い会社なら、値上げ後も販売量を保てるかが、利益を生む力を測る手掛かりになります。
とはいえ、「有名ブランドだから安心」「研究開発費が多いから成長する」と決めつけるのは禁物です。期待だけに寄らず、売上や利益率、キャッシュの変化も見て判断しましょう。
財務諸表の盲点
損益計算書を見ると、研究開発費がどのくらい計上されているかを確認できます。費用になった分は当期利益を押し下げますが、将来の技術や製品を育てている可能性もあるのです。
研究開発費として計上された支出は、貸借対照表の資産額にそのまま積み上がらないことがあります。資産の大きさだけで会社を比べると、技術開発に力を入れる企業の投資を見落とすこともあります。
自社で育てたブランドが、独立した資産として貸借対照表に表示されない場合もあります。数字に現れにくいからといって価値がないわけではありません。利益率や販売動向も確かめてください。
M&Aでは、買収した企業のブランドや技術が識別可能な無形資産として認識されることがあります。買収額と識別できる資産・負債との差額は、のれんとして計上されます。自社で育てた資産との帳簿上の違いにも注意ですね。
研究開発費を読む
研究開発費の金額だけでなく、売上高に対する割合も確認しましょう。同業他社と比べるときの基本ですが、業種によって必要な投資額は異なります。別の業種と単純に順位を比べるのは避けたいところです。
一年度分の数字で判断せず、数年の推移を追います。投資が続いているのか、売上の伸びに対して急増しているのかが見えてきます。増えた理由は新製品の開発でしょうか。それとも既存事業の維持でしょうか。
有価証券報告書の事業内容や経営方針には、開発テーマや重点分野が記載されることがあります。決算説明資料も合わせて読み、以前示された製品化や事業化の目標が実績につながったか確かめます。
研究開発から収益化までの時間は企業によって異なります。費用が増えた年に利益が落ちても、すぐに失敗とは言えません。ただ、将来性を語るだけで売上や利益率が動かなければ、期待を先回りさせず次の開示を待つのが堅実です。
ブランドを評価する
ブランドの強さは会計上の評価額からは読み切れません。価格を上げても顧客が離れにくいか、リピート購入が続いているか。商品やサービスの販売動向で確かめます。
たとえば競合より高い価格でも販売を保ち、粗利益率が安定しているなら、ブランドが価格競争を避ける力になっている可能性があります。販売数量や利益率を数年追うと、値上げの影響と一時的な追い風を見分けやすくなります。
広告費が大きくても、ブランドが強いとは限りません。知名度が上がっても利益につながらない場合があります。顧客の継続率や販売地域の広がりなど、企業が開示する指標も確認してください。
企業がブランドに付けた価値は、株価上昇を保証しません。ブランドが利益やキャッシュを生む流れと、株価に織り込まれた成長期待。その両方を投資家は見て判断します。
本ごとの読みどころ
5冊の扱う範囲は、企業価値の全体像から個別の評価モデルまでさまざまです。テーマを絞って読むと、専門用語にも戸惑いにくくなるでしょう。
評価手法を体系的に学ぶなら、複数のアプローチを扱う本が役立ちます。研究開発費や知的資産の会計に関心がある人は、対象を絞った本で分析の視点を深められます。
刊行年の古い本で評価の考え方を学びつつ、会計ルールや企業の最新状況は直近の資料で確かめてください。著者やページ数、扱う内容も添えて紹介します。
- 『会社の値段[新版]』は森生明著、筑摩書房刊の新書256頁。M&Aや株式投資を入口に、ブランドや人材の価値を算定する考え方も扱います。企業価値の基本を知りたい人におすすめです。
- 『図解でわかる企業価値評価のすべて』は株式会社KPMG FAS著、日本実業出版社刊のA5判224頁。マーケット・アプローチ、インカム・アプローチ、コスト・アプローチと無形資産評価を学べます。2011年刊なので、現行制度は最新資料で補いましょう。
- 『知的資産の会計 改訂増補版』は古賀智敏著、千倉書房刊のA5判384頁。ブランド、技術、特許、ノウハウの会計・測定・開示を扱います。研究開発活動が企業評価に与える影響も学べます。
- 『研究開発費情報と投資家行動』は石光裕著、中央経済社刊のA5判220頁。研究開発費と将来利益予想、投資家の情報収集を実証研究で分析しています。有価証券報告書のテキスト分析も扱います。
- 『ファイナンスへの無形資産価値評価モデル』は山口智弘著、日本評論社刊のA5判176頁。複数の評価手法と運用実務への応用を扱う上級書です。評価モデルや株価動向を詳しく研究したい人におすすめです。
結論
無形資産と企業価値の全体像を学びたい個別株初心者には、『会社の値段[新版]』をおすすめします。株式投資と企業価値のつながりを先に押さえられる一冊です。
評価手法を図解で整理したい人には『図解でわかる企業価値評価のすべて』、ブランドや技術の会計を深めたい人には『知的資産の会計 改訂増補版』が合います。研究開発費と投資家の判断に関心があるなら、『研究開発費情報と投資家行動』を選びましょう。
評価モデルを使った分析まで進みたい人には、上級向けの『ファイナンスへの無形資産価値評価モデル』が適しています。まず本で得た視点を企業の開示情報や利益の推移に重ねてみる。そこから個別株の無形資産分析を始められます。
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